欲望という名の電車/A STREETCAR NAMED DESIRE

Director:エリア・カザン
Cast:ヴィヴィアン・リーマーロン・ブランド、キム・ハンター、カール・マルデン、ルディ・ボンド、ニック・デニス、ペグ・ヒリアス、ライト・キング、リチャード・ガリック
父を亡くし家も失った若くない女性ブランチは、放蕩の限りを尽くし未成年者にまで手を出し故郷を追われる事となった。妹を頼って都会に出て来た彼女は貴婦人らしく振舞っていたが、妹の夫が彼女の過去を暴露した為に今までは狂気の淵にいたが、とうとう狂ってしまう。


主人公ブランチを演じたのはヴィヴィアン・リー。この映画にはスカーレット・オハラの気高いイメージは全くないです。スクリーンに存在するのは、老けたアル中で狂った女。とにかく彼女の演技が凄すぎます。美貌と狂気が混在する彼女を見ていると、背筋が凍りそうになりました。オスカー主演も納得です。
現実と狂気の狭間で揺れ動き、男の為に現実の世界で生きようとし、結局は彼女を現実の世界に留まらせていた男によって狂わされてしまう。あまりにも哀れで、観ているのが辛くなりました。
登場する男達が浅ましすぎます。それを狙っての脚本なんでしょうけど、ひどいんですよね。女性は性欲の対象でしかなく、暴力で全てを解決しようとする。粗野極まりない。この時代ってそうだったのかも知れないですが、目を覆いたくなります。そんな男に惹かれて行くブランチ。彼女がアル中になったのは、彼女の弱さの所為だけじゃなく、女の性だと主張されている気がしてならなかったです。彼女が望んでいたのは、ただ無条件に抱きしめられる事だったと思うんですよ。でも、誰も彼女に愛を注がなかった。望んだのは彼女の肉体だけ。
人間はどこまでも残酷になれる事を、あらためて思い知らされました。私の目には彼らの方が狂って見えました。

2006/04/15

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